「さてコーリル。決意は決まったかな。」

「はい…。」

もうすぐ卒業式が始まろうというタイミング。 コーリルは教官であるフェインと共に、他の者が不在の教官室を訪れていた。

「あの…!」

「なんだ、取引についてまだ疑問があるのかい?」

「え、あ……えと……、何回も聞いて………ごめんなさい……っ…」

取引。 フェインが使ったその言葉は名ばかりのものである。 穏やかな口調の裏から、同意の言葉を渋るコーリルへの苛立ちが透けていた。 その害意に怯え、呼吸を乱しながら、コーリルが言葉を絞り出す。

「本当に、私がついていけばお父さんとお母さんは……助かるんです…か…?」

取引の内容は、コーリルがフェインに従い革命派に与せば身柄を囚われている両親の命を助ける、というものであった。 リーム派の有力者である両親が命の危機にあると告げてきた人物が、よりにもよって両親の友人であり入学を手配してくれた恩人であるフェインであった時点で、コーリルは諦めた。 両親を裏切り革命派へ寝返っていたフェインへの怒りすら沸かない。気掛かりなのは取引の内容が本当であるかの一点のみである。

「ああ、保証するとも。罪の無い子から親を奪うのは、外道のやることだ。」

「………。」